鉄の皇帝バシレイオス その11::人物列伝
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鉄の皇帝バシレイオス その11

2007-08-10 ; 人物列伝

滅ぶ道は潔く、生き残る道は茨の道。歴史とはなんと皮肉なことか・・・。
【ミルミル・ハミール著「ある日の手記」より】



シカツーノがルヴァの手紙を開けてみると、書かれていたことは非常にシンプルなものだった。
「キエフルーシを味方につけなさい。資金がないのならどうすればいいのか考えなさい。」
キエフルーシといえば、先代ヨハネスと激しく争った国で、最終的に猛々しいルーシであるスヴャストラフを敗走させ、戦いは終結した。キエフルーシはビザンツ帝国軍の精強さ、なにより戦術・ギリシャ火戦術に舌を巻いたに違いない。
ブルガリアと違い、キエフは直接対峙した国ではない。キエフとしてもビザンツの力を現時点では過大評価しているだろう・・。そこに同盟の余地があるということか。
だが、スヴャストラフの後を継いだルーシは、名君とすでに噂されている。先代の死後、兄弟間の勢力争いに勝ち残ったのは、最も出自の悪いこのルーシだった。彼の名はウラジミール。後にキエフルーシの最盛期を現出する人物である。
シカツーノは、この手紙の真意をいまいちつかめなかったので、バシレイオスにこの書を閲覧してもらうことにした。
下手なことをして皇帝の機嫌を損ねると元も子もないが、シカツーノとバシレイオスの間には周囲からは異様とも写るほど信頼関係があった。一種の幼馴染ということもあったのだろう。

ルヴァ将軍の書を見たバシレイオスは、みるみる鎮痛な面持ちになる。
「バシレイオス様・・」ルヴァ将軍の意思を汲み取ることができたのだろうか?シカツーノは声をかける。
「ルヴァ将軍とは、なんという尊大かつ歯に絹を着せぬ将軍なのだ。これほどの知略がただの市民だというのか。才能とは出生・家柄ではないということだな。」ため息をつきながらバシレイオスはそう独白した。
「シカツーノ。ルヴァ将軍の考えは私にとっては恐ろしいものだ。現在ビザンツがルーシに渡せる金品はなにもない。領土にいたってはいつ消えるかわからない。となると、ビザンツが渡せるものは何か分かるか?」
「いえ・・・、あ、まさか・・。」
「やっと分かったのかシカツーノ。そう。国威を売るのだよ。ウラジミールに皇族を売るということだ。」
「政略結婚、人質・・・」
「人質では納得しないだろう。アンナに嫁にいってもらうしかあるまい。」
「・・・・・・。キエフルーシにですか・・。」
「あんな蛮族どもに古代ローマから続く伝統を売り渡せというのか!ルヴァめ!」と怒りの声をあげ、バシレイオスは持っていたグラスを投げ捨てた。
派手な乾いた音とともに、グラスは砕け散る・・。それで少し平静を取り戻したのか、彼の言葉は続く。
「他に手はないか策を練る。シカツーノご苦労だったな。」
シカツーノは軽く会釈をし、王の間を後にした。

その日の夕刻、シカツーノはアンナに謁見の許可をもらい、彼女の私室へ入室が許された。
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船窓プチオフお疲れ様
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オフゲーにはまってました・・。

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