鉄の皇帝バシレイオス物語 その8::人物列伝
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鉄の皇帝バシレイオス物語 その8

2007-07-31 ; 人物列伝

陛下にとっての輝かしい実績の始まりは、陛下自身には幸せだったのか不幸なことだったのか陛下に一度聞いてみたかった。
【ミルミル・ハミール著「我が皇帝」より】



もうひとりのルーシ・ウラジミールはいずれ触れるとして、バシレイオスに話を戻すことにしよう。

ヨハネス帝健在のころのバシレイオスは、少年から青年へと成長していた。彼は母が幽閉されてしまったことを快く思ってはいなかったが、母の華美をあまりに求めるところに辟易していたのは事実で、ヨハネスに対しては好意的ではないにしろ、悪意も持っていなかったといわれる。
彼は、シカツーノと共に剣の腕を磨き、フォカス・ヨハネス両皇帝の施政をじっと見守っていた。

シカツーノは、20歳になると父シカカークと共に戦場に赴き、父の戦術を学び、知将として名高いルヴァの師事を受けた。
時は流れ976年。シカツーノは、父と共にイスラム相手に戦いに明け暮れ、ついにパレスチナを占領したビザンツ軍は、これ以上の深追いは危険と判断したヨハネスの指示の元軍を本拠地に向けて引き上げていた。
帰路につく道中のある日の夜のこと・・・・、
たいまつを囲みながら父は、シカツーノにある文書を手渡す。
「父さん?これは?」怪訝な顔でシカツーノ。
「それは、ルヴァ将軍がしたためた手紙だ。もしヨハネス帝が亡くなった時、その書をあけるがいい。」
「若い皇帝が亡くなるのはまだまだ先の話だよ。父さん。」とシカツーノは苦笑する。
「そうだな・・」と顔に深いしわを作り急に真剣になった父の顔。そして、父の言葉は続く・・。
「シカツーノ。良く聞け。場合によっては、お前には最も辛い道を歩んでもらうことになるかもしれない。そのときは父を許してくれ。」
半ば独り言のようにつぶやく父に、シカツーノは何も言葉をかけられずただ見守るばかりであった。

その一週間後。ヨハネス帝崩御の知らせがシカカーク将軍の元に届く。
この知らせはシカツーノだけでなくビザンツ全体に激震をもたらす。優れた王がなくなったあとは、押さえ込まれていた周辺諸国が牙を向いてくるのが定石。しかも、次に皇帝になる人物はいままで置物でしかなかったバシレイオス。これに黙っている国はないだろう・・。

「シカツーノ。お前に話しておくことがある。」
神妙な顔で頷くシカツーノ。
「この国で近いうちに内乱が起こるだろう。その時お前はいち早く皇帝の元に参じろ。」
「お前はというところが意味がわからないよ。父さん。父さんももちろん・・・」
とシカツーノの言葉をさえぎる父。
「叛乱が起きればかつてないほど国は二分されるだろう。そしてどちらかが必ず滅びる。そうなったときロクツノ家はどうなる?わかるなシカツーノ。」
「でも、父さん」
「でもじゃないシカツーノ。」
父はそれ以上何も言わなかった。この沈黙こそが父の決断の強さを物語っている。父が恩のあるバシレイオスを裏切るつもりなどないことも、自らが軍に影響力があり、父が叛乱軍に参加すれば叛乱分子は根こそぎ団結することも、ロクツノ家が生き残る道はたしかに父と子が袂をわかつのが確実なことも、そして・・・父が滅びる気でいることも・・全てシカツーノはわかっていた。でもなお言わずにはいられない。
「父さん。例え滅びても私は父さんと共にありたい。」
父はシカツーノの言葉には答えず、じっと前を向いたままであった。

こうして、二人の率いる軍はコンスタンチノープルへ無事帰還する、しかし休息もないまま次の戦いがはじまろうとしていたのだった。
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