鉄の皇帝バシレイオス物語 その4::人物列伝
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鉄の皇帝バシレイオス物語 その4

2007-07-08 ; 人物列伝

フォカス帝は軍事の才能がありすぎたのだ。それこそが欠点でもあった。
【ミルミル・ハミール著「回顧録」より】



フォカス帝の治世は、戦乱につぐ戦乱であった。彼の才能に支えられたビザンツ軍の活躍は目覚しいものであったことは前回のとおりである。
ある日の夜、コンスタンチノープルにて、二人の屈強な男が上品とはいえない酒場で酒をくみかわしていた。
一人は、ビザンツ帝国の将軍であり、現皇帝の甥にあたるヨハネス。もう一人は、ビザンツ一の剣豪と噂されたシカカーク。
ヨハネスは、現皇帝にかなりの不満を抱いているらしく、古くからの盟友であるシカカークに愚痴をこぼしている。酒もかなり回っているようで言葉もかなり過激なご様子・・・。
「シカカーク。フォカス帝についてどう思う?」
「フォカス帝の指揮官としての能力は、かのアウレリアヌス帝に匹敵すると俺は思う。」
(アウレリアヌス帝とは、ローマ帝国の中でも屈指の軍人皇帝と言われている人物で、三分裂していたローマ帝国を一つにまとめあげ、ゼノビアのパルミラを滅ぼすなど、軍事的才能に長けた皇帝であった。詳しくは、ミルミル氏のこの記事を参照に。)
「確かにフォカス帝の軍事的才能には、この世界の何者もかなわないだろう。しかし、奴には致命的な弱点がある。」
「それは、内政面か?」
「内政面が弱いのは当たり前だろう。奴自身そのことはわかっていて、戦争によってビザンツに平安をもたらした後、内政は元老院の連中に全て委ねる腹だ。それに関しては私も全く異論はない。」
「では、何だというのだ?」
「奴は、能力のありすぎる者を警戒しすぎるのだ。それも軍事的才能に特化してな。お前や私のような・・。」
と、かなり泥酔しているヨハネスに、シカカークはため息まじりに彼の肩を叩き励ますのだった。しかしヨハネスは止まらない。
「お前も、ビザンツ一の剣豪と謳われながら、戦乱の世になってまだ幼帝の教育係のままだ。私も将軍という地位にありながら辺境の防衛ばかり・・・。」
と、言葉途中で突然止まってしまったヨハネス。シカカークは隣の盟友に目をやってみると、彼はそのまま机につっぷしているのだった・・。
ヨハネスの酒乱ぶりは相変わらずのことであったが、シカカークは何か心にひっかかるのであった・・。

フォカス帝に少しスポットを当ててみよう。彼はたしかにヨハネスの言うように一定以上の能力を持った軍人を冷遇したが、それ以外の軍人に対しては功績を上げたものに対しては厚く遇した。また、軍人出身の皇帝らしく、軍人に対して支払う俸給も大きく、統一ローマの混迷期から抱える軍人の過大な権力・待遇に自ら加担していた。
一方内政に対しては、放任主義というか無関心で、度重なる戦争によって国庫は火を吹いていた。
これに対しては、周辺諸国を平定すれば安定すると皇帝は軽く見積もっていたようだが、ビザンツの敵国は多すぎた・・・。
いつ終わるか分からぬ戦争に加え、破綻した国庫に民衆は不満をいだいていたが、戦勝につぐ戦勝のため、大きな叛乱にはいたらなかった。
またフォカスは、父としてバシレイオス・アンナ・コンスタンティヌスを愛し、よき父であったようだ。
彼らを一人前の皇族にするために、惜しみなく人材を使い教育させ、血の繋がっていない子供たちを廃す動きもまったくなかった。
しかしながら歳のはなれた妻テオファノとの仲はおせじにもいいとは言えず、それは、無骨な軍人であったフォカスと、きらびやかな世界に住み続けるためにフォカスと再婚したテオファノ・・。水と油がうまくいくはずはない・・。当然といえば当然の夫婦仲であったといえよう。

しかし、戦争に継ぐ戦争の世が長続きはしないのが世の常・・・・。時代は停滞から一気に加速する。

続く。
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