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日露戦争で大陸利権を売却していたら

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2016-10-08 ; 自作小説

以前妄想した、日露戦争後に大陸利権を売っぱらっていたらを少し小説化してみました。
歴史改変もの 1

"ロシアと戦争がはじまる"

なんだ、これは。夕飯を終え、宿題をとっととすましてしまおうと数学のノートを開くと、ロシアと戦争がはじまるとノートに殴り書きされていた。少年本人の字と違う字で...

誰だよ、こんなイタズラしたのは。と、消しゴムを走らせた少年だったが、何度消しゴムをかけても字はビクともしない。

"イタズラするな!"

字が消えないのにイライラした少年は、ノートに殴り書きする。

"君こそ、私のノートに何てことを"

えー!どうなってるんだ。俺のノート!と少年は浮かび上がってきた文字に絶叫した。

「どうしたんだ?健二?」

絶叫した少年、健二を心配し、父親が部屋を訪ねて来る。

「少し、ビックリすることがあったんだけど、まあ何でもないよ。父さん」

息を落ちつけ、深呼吸を二度した後、健二は父親にそう告げる。彼の様子を見てひとまず安心したのか、父親は戻っていった。

さて、どういうことだ。これは。もう一度書いてみよう。

"ロシアと戦争とかそんな様子もないけど?"

"何を言ってるんだ!日本とロシアの対立は決定的で、もう後戻りはできんぞ"

意味がわからない!何を書いてんだこの人は。

"ロシアと揉め事?北方領土かよ"

呆れた、北方領土で戦争?この人大丈夫かよ。

"北方領土?どこだそこは。朝鮮の問題に決まってるだろう"

はて、朝鮮とな。北朝鮮の核か?ロシアがなんで出てくるのー。なんかさらに文字が。

"朝鮮は、先の日清戦争で、清は手を引いたのだが、朝鮮王朝はロシアを抱き込もうとしている。朝鮮半島は日本の防衛線に必須なのだ。譲るわけにはいかない"

日清とか。何言ってるのこの人。んで、ロシアと戦争かよ。
健二はスマートフォンで、日清戦争を検索した後、日露戦争のことを調べた。
えー、日露戦争は1904年2月8日から起こった戦争か。100年ほど前のことか、案外最近じゃないか。
せっかく調べたことだし、誰だかわからないけど、書いてやるか。

"日露戦争、1904年2月8日から1905年9月5日まで。ポーツマス条約にて講和。戦争推移は..."

と推移まで詳しく書いてあげた健二は、書ききった心地よい疲労感に満足していた。
健二が長々と書いてる間、あちらさんは終始無言であった。最後に以上と書くと反応があった。

"君は、何者なんだ。本日は2月5日。君が言うことが本当ならあと3日でロシアと戦争がはじまるのか..."

その言葉を最後に確認すると、健二はノートを閉じた。

「健二ー。まだ勉強か?」

扉の外から父親の声。日露戦争の筆記でずいぶん時間を取られ、父親と約束の時間を大幅に過ぎている。父親はいいんだが、妹がうるさいんだよな。

「あー、今いくよ」

「お、そうかそうか。リビングで苺と一緒に待ってるぞ。今日も猿を狩りまくるぞ」

健二たち家族のうち、母親以外の三人は割にゲーム好きだった。今健二ら三人で、モンスターをハントするゲームに熱中していた。

健二自身、この日あったノートのことはすっかり忘れていたのだか、4日後の数学の授業時に事件は起こる。

教師が黒板に書く内容をぼーっと板書していた健二だったが、ノートに字が浮き出てきて悲鳴を上げそうになる。ついでに、眠気もすべて吹き飛んだ。

"君は、君は一体何者なんだ...君の言った通り、全くズレることなく戦争が推移している..."

またか!この人の妄想はすごいな。一度付き合ったから無視するわけにも行かないな。

"はは、俺は予言者なんだ"

"預言者...今ならその言葉を信じれる。この先日本はどうなるのだ?"

希望もたせて、妄想を書いてもいいけど、俺は預言者だからな。正確に書かねばならぬだろう。
健二は預言者気取りで調子に乗って続く言葉を書く。

"最後は世界と戦争して、大量の犠牲者を出し、無条件降伏する。その後平和になる"

"...なんということだ。預言者殿、どうにかならんのか?"

食いつき過ぎだろ。どうしたらいいかって言われても歴史の事実だから、どうしようもないだろ。
ひょっとしてこの人、架空戦記好きなのか、よくある「もし、日本がこうしていたら世界はこうなった」ってやつだ。
こういうの父さん好きだったな。

"俺は預言者だからな。賢者に聞いてみよう。夜まで待たれよ"

健二は父親を勝手に賢者(笑)として紹介してしまった。預言者プレイにも何気にノリノリである。

その夜、夕食時に健二は父親にノートを見せ、どうするか相談した。
父親は最初驚きで、目を見開いていたが、この不思議現象に乗っかってくれることになったのだ。
ただ、字を書くのは健二がやるということになった。

父親の案は、朝鮮や満州などに投資しても結局無駄に終わり、肝心の日本国内が微妙になる。それならいっそ、日本国内に投資を絞り、他は売っぱらってしまえば、日露戦争の借金も無くなって一石二鳥じゃないのかというものだった。
そもそも、日本は島国で海洋国家たるべきだとも。
最終目標は太平洋戦争の回避。アメリカと戦争しても勝てるわけがないだろということだ。
健二も確かにそう思う。アメリカと戦争し、勝てたとしても被害は甚大なものになるだろう、建物は立て直せばいいが、人命はそうはいかない。
戦争回避が最終目標。平和でいいじゃないか。

"賢者に案を聞いてきたぞ"

"預言者よ、待っていた。あれから数日経つのでもうノートに書かれないのかと思ったぞ"

彼の中では数日経っていたらしい。

"日露戦争後の講和会議である、ポーツマス条約より、日本の将来を変えていく。講和では、満州利権、朝鮮、南樺太を譲渡される。満州と朝鮮は列強に高く売り払え。その金で、日露戦争の借款を返済し、国内投資を行うべし"

"日本は朝鮮を取るためにロシアと戦争したのだぞ。それを放棄するとは"

"アメリカやイギリスなどが朝鮮、満州に入ればロシア、清とことを構えることはない。中国大陸については不干渉を貫き、朝鮮・満州と貿易すればよい。購入するであろう国は本国が遠いので、きっと日本のよい貿易相手になるはずだ"

"預言者殿、賢者殿がそう言うなら信じてみよう。しかし、領土を売るか。利を取るに逆転の発想だな"

"韓国の済州島は残し、防衛線に。現地人は後の憂いを無くすため、朝鮮に送還すべし。樺太はロシアと接するので、いつか北樺太を取れる機会があればよいな"

"済州島も現地人を労役させるのではなく、無人にするほうが憂いはないということか。面白い。預言者殿の期待に応えてみせようじゃないか"

ちょうどここで、ノートを使い切った。彼の妄想に付き合うのもここまでだな。
父親の話、この人の話、初めはビックリしたけどなかなか楽しめたな。

ノートを閉じた健二は、深夜までモンスターをハントし続け、ノートのことも記憶の隅へと追いやられた。
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