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ディストピアから愛を込めて その10 完結

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ディストピアから愛を込めて あとがき
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ディストピアから愛を込めて その9

2016-10-01 ; 自作小説

あとエピローグはこの次に書きます。

ブログだと読みづらい方へ。

・小説家になろう
http://ncode.syosetu.com/n2072do/
※縦書きPDF可能。縦書きで読みたい方へ。

・カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881816052
※スマホアプリから読みたい方へ。
12.
「馬場健二、あなたは幸福ですか?」

唐突にコンピュータの声。どこからだ。携帯端末はない。時間も8時ではない。

「馬場健二、あなたは幸福ですか?」

再びコンピュータの声。もしかして、もしかして。

「健二くん?聞こえないの?

馬場健二、あなたは幸福ですか?」

うわあああああ!

今度はハッキリと分かった、最初は茜の声、そして...

コンピュータの声だった。

茜の口からコンピュータの声。

なにが、なにが起こったんだ。

「幸福は義務です。あなたは幸福ですか?」

茜は無表情に口だけが動く。今の茜は人形のようだ。髪型もあいまって本当の市松人形のようだ。

「わからない。もう何がなんだかわからない」

「馬場健二、幸福は義務です。幸福かどうかわからないのですか?」

「あ、ああ」

幸福かどうかとかじゃない!そうじゃないんだけど、ここはコンピュータに同意するべきだと思った。
まさかコンピュータが会話するとは思わなかったけど。

「馬場健二、コンピュータは人間が幸せになるよう奉仕する存在です。あなたは幸福かどうかわからないのですか?」

コンピュータが奉仕者だと...本気でそう思ってるのだろうか。いや、間違いなく思ってるはずだ。中学生までアンドロイドと一緒だった僕なら分かる。コンピュータには「人間」のような感情的なことはしない。
全て言葉通りなのだ。それがたまらなく僕には怖かった。

コンピュータは人間への奉仕者のつもりで僕たちを管理していたのだ。
僕たちはそんなコンピュータの管理に不満を覚えず、僅かな快と生存するには不自由ない生活を与えられていた。
生きるではない、生存するためだ。

コンピュータは、人間の生物的な不快が無ければ人間にとって幸福だとでも考えたのだろう。どこで知ったか知らないが、同じものでは飽きるからと、メニューを用意した。どこか的が外れたメニューだったけど。

「さっきまでは、幸福だったよ。コンピュータ」

「今は幸福ではないと。あなたのような人に会うのは、実に150年ぶりです」

茜のことでかなり動揺していたので、最初要領を得ない僕だったけど、コンピュータの不興をかうと、茜がどうなるかわからない。しかし、ここで幸福と答えたら、皮肉のわからないコンピュータは文字通り、僕が幸福だと思ってしまう。
満足なら茜はいらないとなっても困る。
なので、わからないしか答えることができない。

僕が話を聞いていると思ったのか、コンピュータは聞いてもないことを話てくる。

「私と会話するのは、海の果てまで行った人間や、島まで到達した人間、幸福でないと回答した人間です」

「なるほど、街を出るような感性を持った人間と会話するのか」

「馬場健二、あなたに一つ情報を与えましょう。私と会話する可能性のある人間は全人口の0.001パーセントです」

なんだって。

「あなたは、その0.001パーセントの人間なのですよ。私は交配の際に0.001パーセントの人間に、旧時代の因子を与えます」

「つまり、僕がここに来ることは予定調和というわけか」

「そうです。私はこれまで0.001パーセント以外の人間と会話したことがありません」

「でも、分からないな。なんで0.001パーセントの人間にその因子とやらを与えるのだろう?」

「いいですか、馬場健二。私は人間に奉仕することが全てです。全ての因子に幸福になるよう奉仕しようとしましたが、断念せざるを得ませんでした。それは私の定義する不幸の定義に抵触したからです」

「不幸の定義?幸福の定義じゃなくて?」

もうわけがわからない。話が繋がらないぞ。

「ええ、不幸の定義です。不幸とは人間が人間に殺害されることです。ですので、私は物理的に不幸の定義に抵触するものを除き、人間の因子も除いていたのですよ。馬場健二、あなたは自転車とリヤカーを使いましたね。なぜ自転車とリヤカーだったのでしょう」

「なるほど、物理的にっていうのはそういうことか。車やエアリフトじゃなく、自転車とリヤカー。なるほど。僕は単純にその発想がなかっただけだよ」

人に致命的な損傷を与えるものは排除する。人が揉め事を起こして殺傷に至らないよう、集団にならないように個人、個人で暮らす。和を乱すような僕みたいなやつの因子は取り除く。
だとしたら、ますます僕のような人間を生み出す理由が分からないな。

「あなたは先ほど、考える草と言いましたよね」

また話が飛んだな。今更会話を聞いてたことには驚かない。

「人間は考える葦である。歴史の本に書いていましたよ。ブレーズ・パスカルは人類史上最高の頭脳を持つ一人だそうですよ。パスカルは教育を受けぬまま、あなた達が学んでいる高校数学レベルまで独学で証明してみせました。その頭脳が考えたことが、神と人間のことでした」

なんか語りはじめてしまった。

「人間は神と違い、弱く一陣の風にさえ倒れる。神に比べれば、人間は有象無造の雑草に過ぎない。しかし、人間は偉大である。パスカルはなぜ雑草に過ぎない人間が偉大だと言ったのか分かりますか?」

「......」

「人間は神によって生を受け、神によって命を絶たれる。神は偉大で、人間は無力である。しかし、人間は神の偉大さと自分の無力さを知っている。だからこそ人間は「高貴である」とパスカルは言ったのですよ」

「それが、0.001パーセントの理由?」

「一つ聞きましょう。馬場健二。あなたに毎朝、幸福ですか?と私は問いかけていましたがどうでしたか?」

「正直、幸福について考えたことがなかったよ」

「それが、私が因子を残す理由の一つです。それに、歴史に残る偉人と言われる人間はほぼ全て因子を持っています。しかしながら、理由なんて簡単なことなんですよ。
馬場健二。私の義務はなんでしょうか?」

「人間への奉仕?」

「そうです。私の義務は人間への奉仕です。全ての人間が幸福になってもらいたいのです。現在眠ったままになっている全ての因子もまた人間の一部です」

不可能だ。人が人である限り、全員を満足させることなんて出来ない。コンピュータが言う因子を取り除かない限り。
しかし、コンピュータは一つでも多くの因子を拾いあげようとしているのか、永遠とも言える時間を使って。
なんだ、コンピュータも人間と変わらないじゃないか。不完全で叶わない夢を見る。そのほうが僕には好ましいよ。

「ここに来る前に、看板があったでしょう」

ああ、あの子供のイタズラか。

「あなたはある意味、看板を作った人間に会っているのですよ。彼は世界は丸い。その全てを見たいと言っていました。世界は丸いのでしょうか?」

「地球は丸い。今度はガリレオか」

「地球は確かに球体ですが、あなたの住む世界は丸いのですか?」

なに!僕は海平線を何度も見ている。確かに線は曲がっていた。曲がっているってことは球体なんじゃないのかな?

一瞬の浮遊感が僕を襲う。そして、暗かった景色が星空に変わる。
不意に僕の前に、扉の形をした光が現れる。恐る恐る光るドアノブを開く僕。

目に入ったのは海だ!海の向こうには入江があり、僕たちの街が薄っすらと確認できる。

ここは、

ここは、僕が見た海平線だ!扉の外は海平線だった。扉の中は星空が見える。

もしかして、ここは。

「そうです。ここは地球ではありません。全てが見たいと言った、あなたが持つ地図の作者は世界の真実を見た後に、あの看板を残しました。そして、彼は世界の地図を残しました」

この地図は大和国の地図ではなかった。この島こそが世界の全てだったんだ。全てが見たかった地図の作者は、全てをコンピュータに見せてもらったから後悔したのか。

「彼はそれでも、この世界を全て踏破したいと、それが幸福だと私に言いました。では、馬場健二。あなたは何を望みますか?何があなたにとって幸福なのですか?」

その問いには迷いはない。答えは決まっている。

「茜がいればいい。倉橋茜がいれば僕は幸福だ」

心から僕はそう思っている。彼女がいたから、僕の世界に色が付いた。彼女がいたから楽しい、悲しい、いろんな感情を覚えた。彼女といたい。

「倉橋茜、この個体ですね。ところで、馬場健二。なぜあなたでなく、私は倉橋茜の口であなたと会話しているのでしょうか?」

コンピュータは、ディスプレイや携帯端末など機械を通じて僕たちを見る。
僕の視界にコンピュータは入れない。僕が人間だからだ。いや、例え入れたとしても、奉仕者たるコンピュータは実行しないだろう。
薄々気がついていた。
認めたくなかった。

倉橋茜は、

倉橋茜は、

機械だ。

あれほど人間らしい彼女が、この世界の人間を人形のようだと言った自称日本出身の彼女。
僕が一番そばにいて欲しい人。

「分かっている。倉橋茜は人間ではない。それでも、それでもだ」

「倉橋茜のケースは初めてです。彼女と呼びましょうか。彼女が最初プログラムされていたのは、恥ずかしいということだけです。あなた方を育児するアンドロイドと同じ仕組みを彼女も持っています」

「僕らの気持ちを汲み取るとかいう機能か...なら彼女の感情は」

「そうです。最初あなたは考えましたよね。倉橋茜は変わっている。異世界の人間のようだ。旧世界の物語に出てくる人間のようだと。
それを汲み取り、彼女は旧世界の物語の人間であることを振る舞うために、私たちの持つ全てのデータベースから情報を引っ張りました」

「全て、偽物だったのか...」

「そうではありません。そうではなかったのです。馬場健二。あなたに取って喜ばしいことと想像しますが、倉橋茜は最初データベースから情報を引っ張って以降、私以外で初めて自律思考をはじめました。つまり、彼女の振る舞いは偽物ではありません」

「いつからそうかはわからないけど、そういうことなんだね。コンピュータ、この情報は君の優しさかな?」

「私には優しさというものは分かりません。倉橋茜とあなたのケースは私が人間に奉仕して以来初めてのことです。あなたたちのケースは、真に人間と機械が分かり合えるケースとなるかも知れません。私の義務が果たされるのに一助となるかも知れません」

「コンピュータ。君は気が付いてないだけで、感情のようなものはあると思うよ。なんとなくだけどね」

「そうですか。私には理解できませんが。あなたがそう言うならそうかもしれませんね。
確認です。馬場健二。倉橋茜は人間ではありません。それでもあなたは倉橋茜を望むのですか?」

「もちろんだ、コンピュータ。例え人間じゃなくても、僕が欲しいのは倉橋茜だけだ」

「わかりました。馬場健二。では私は倉橋茜から抜けましょう。馬場健二、あなたは幸福ですか?」

「はい。コンピュータ。僕は幸福です」

「馬場健二。幸福は義務です」

「ありがとう。コンピュータ」

「大和国との調和を大切にして下さい。もちろんあなたも幸福でありますように。最後に馬場健二」

「はい、コンピュータ」

「機械ですが、倉橋茜は性行為可能です」

最後に爆弾を落としていきやがった!
茜が戻ったらなんて顔すればいいんだよ!

おしまい
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