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ディストピアから愛を込めて その9

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ディストピアから愛を込めて その8

2016-09-30 ; 自作小説

いよいよ佳境!
11.
「おはようございます。馬場健二、あなたは幸福ですか?」

毎朝8時ちょうどに1分1秒ずれることなく、僕の携帯端末からの呼びかけ。

「はい。僕は幸福です。コンピューター」

僕はコンピューターの声に答える。
うん、今僕は幸せだ。今日もこれからきっと幸せになる。

「馬場健二、幸福は義務です」

時計塔でコンピュータの朝の挨拶を聞いた僕の横には自転車に乗った茜。
今日は島まで行くぞー。

案外、楽々ボートは進む。ユラユラゆらゆら。

「行ける!行ける!」
飛び跳ねる水玉模様な水着姿の茜。残念水玉は揺れない。

1時間ほどして、ようやく僕たちは島にたどり着く。端末携帯は浜辺に置いてきてしまったけど今更かな。海の下に落としてしまうと拾えないと思ったから。
海の下に落とそうが、端末携帯は壊れないけど、僕らは泳ぐのがうまくないので、底まで潜れないから仕方ない。

この島に来たことで、僕たちの生活は大きく変わることになるとは、この時は思いもつかなかった。


ボートを岩場にくくりつけ、上陸した僕たち。少し早いけど食事をとることにした。今日はまたおにぎりだ。
こんなに楽しいのに、街の外には誰も行かない。海を見たのもたぶん僕たちだけ。
今度は優を誘ってみようかと、声の高い友人の顔を想像したけど、彼の顔も人形に見えてしまい思わず頭を抱えた。

「どうしたのー?」

「優って覚えてる?」

「ん、あの」

「談話室前であった」

あーー!と叫びながら、頭を抱え真っ赤になる茜。

「彼も連れて来たいなと、優の顔を想像したら、彼の顔が人形に見えたんだ...」

「あー、優くんもあっちの人だもんね」

「友人が人形だったことがさ、少しショックで」

「パイルを飲みたいと思う?」

「いや、もう思わないよ。パイルはすごく悲しい気持ちを抑えてくれるけど、すごく楽しい気持ちも無くなってしまう。残るのはわずかな快だけだよ」

「快って?」

「快、不快の快だよ。少し楽しいんじゃなく、快。そこに気持ちは殆どない」

「だったら、優くんもこっちに連れて来てあげればいいんだよ!それが友人じゃないの?友達も楽しければオレタノシーって」

「そうだね。茜が言うと、簡単なことに思うよ。優改造計画やるか」

僕らは大声で笑いながら、ハイタッチをした。

「あ、そういえばさー。談話室に行った同士が名前で呼ぶんだよね。この世界の人...健二くん...まさか...優くんと」

キャーっとはしゃぐ茜。そんな茜の頭を軽くはたく僕。

「そんなわけないだろ!同性は言葉を交わす相手には名前で呼ぶよ」

「冗談だってばー」


昼食を終えた僕たちは島を探検することにした。
さすがに島の中にアスファルトは無かった。かわりに膝くらいの高さがある雑草と、まばらにある木。奥に行くほど木の密度が増えている。

さすがに水着だと怪我をしそうだったので、制服に着替えて、再び奥へ。
草をかき分け、奥へ奥へ。
ん、人間は考える草とか言っていた人が昔いたらしい。
なんて考えていると、横幅人二人分、高さ人一人分の怪しい横穴がある。
なんだこの怪しいのは...

えーこれはないよねーとお互い見合わせたけど、横穴に入ってみることに。

中に入ると、入り口に怪しい看板がある。うーん。木製の10センチほどの杭が床に刺さっており、杭には薄い板が貼り付けられている。板には文字が書きなぐってるようだ。

この奥に行くと君は後悔するだろう

太字の油性マジックで書かれたその文字は、子供のイタズラのようで、とても真剣なものには見えない。

「どうする?」

僕は茜に目配せする。残念ながら灯りになるものは持ってないし、深く潜ることはできないから、このまま引き返してもいいかな。また来ればいいし。

「危なそうならすぐ戻ろっか。少しだけ見てみようよ」

奥へ行くほど暗くなっている通路を見て、茜は僕の手をギュッと握る。
思わず彼女を見ると、暗いところのイベントは手をつなぐのよ...とか言っている。
まあ、行ってみようか!

茜の手をギュッと握ると、茜もギュッと握り返してきた。

そうして一歩踏み出した。踏み出してしまった。
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